夜叉と日本人形


 「なんでそのことを知ってるの…?」
 B、老があらわれたことよりも、そちらが気になりたもう。
「わしゃ、何でも知っとる……」
 老の真ケンな目に、2人息をのみたてまつらん。
 ちほう症と知りつつも、2人、この老の云ふことを信じたまわん。
「ど、どこにいるの?」
「Aは…………、あれ、わしゃ何をしてるんじゃ?」
 老、とうとう症状があらわる。
「おじーちゃん!」
 女子、再び現れしに、B、Cに無礼をわびたもう。
「ごめんなさい、おじーちゃんったら、抜け出してわけのわからないことを口走るクセがあるの…」
 はたして、女、老、家に帰りつる。
 B、C、またもや呆然と、その場に立ちたまわん。
「どこにいるそうろう」
 C、B、云い合えたてまつるに、さきの女子、向き給へて、云いたもう。
「おじいちゃんのカンゴをおねがいできないかしら」
 女子の美しきほほえみにB、
「いいよ…」
 C
「否!」
 と云い給ふ。
 二人の性格のさまが出でし候。
「いいじゃない、Aのじょうほうが得られるかも」
 B、Cをなだめ給ふ。
「しょうがあるまい。だが、マンガや小説みたいに、タイミングよくAのじょうほうが手に入れしことなどそうそうあるまい」
 C、Bに納得しつつも、文句をおおせ給ふ。
「それではついてきなさい」
 女子、老をB、Cにかつがせ、さっそうと歩き給ふ。
 老をかつぎしC、
「私たち、あの女に利用されてる気が…」
 と、疑ぐいをみせ給ふ。
 老をかついでおらぬBは、こころよく
「気のせいよ。あの女の人はきっといい人よ」
 と云い給う。
 C、“Bは(重い)老をかついでないからそんなこと言えんだよ”と思いつる。
 B、そんなことつゆ知らず。

 そして、老のすみかに来たれ。
 中、入るやいなや、やがてばあさん出てきたり。
「あんらまあ今日はお客がたくさんおるのう!」
「あら、あの子は?いないの?」女、云いたもう。
「あの子?あぁ、今眠り給ふや」
「じゃ、私はあの子のとこへいくわね。じゃああなたたちよろしく候」

「あーーあ、つまんなーーい…」
 C、云いたもうて、B、云ふ。
「ねぇ×2、あの子って、あの女の人の子供のコトかな?」
「んーー……きっとそうね…あーーあおなかすいたー……ちょっと女の人よんでくるね!」
「うん」

 C、云きゆきて、女のへやに入りたもう…。
 しかし、女はいなく、よく見ると、人形しかない。
「あら…?日本人形かしら?…」
 さわると、その人形、ころんと横になりつる。
「何やってるの!」
 女、急にきたりて叫び給う。
「えっ…あ…ごめんなさい!キレイな日本人形…」
「その子がおなかすいた。ていうからーー…おーーよしよし……」とて、人形抱きかかえたもう。
「な…なにやって…」
 C、おびえてうまく口がまわらん。

 いきなり原文おまけ

 牙夜さんの素敵な字体vV


「今ごはんをあげますからね…」
 女、狂ったとCは見て、いそいでBの所にゆきゆきたもう。
「わーー!こわいーーよーー!」
 B、その叫び声におどろきたもう。
「な、なに?イキナリ大きな声して…」
「ちょっと!早く逃げるのよ!」
 そうさけび、すぐさまBの手をとりたもうて、出口へ走りつる。
「まちなさい……」
 女、前に出でて、夜叉になりつる。
「あなた…人間じゃないの…?」
「ほほほ、秘密を知られたからには、生かしてはおけまい!」
 夜叉、大いに叫びて、Cをつかまえ給ふ。
「た、助けてー!!」
「あの子の食事がまだなのよ…。おなかをすかせて待っているの」
「キャーーっ!!たすけてーーーー…!!」
「B!!!……よーしっ……!!」
 するとC、夜叉にくぎをなげたもう。
「!!う゛っ…!!」ささり、夜叉、たおれつると、B、C、横目に見て、にげつれ。
 どこまでもゆきゆきた。
「ここまで来たれば、もう大丈夫」
 B、Cほっと息をつきしに、妖しい気はいを感じとり、後ろふりむきになんと、あの日本人形が在りつる。
「なによこれ」
 B、恐ろしげに云ふ。人形カタカタと不気味な音を発しながら、さらに近くへとよりつる。
 すると人形すごいはささでとびかからんと知れ。
 B、さけび、ふりはらい、逃げる。
「!キャァァ!!!」Cひっしに人形に石をなげつる。
 しかし、手がもげようと足がもげようと、おいつれ。
「だれか助けてー!!」
 さらに不気味さをました人形がカタカタいいながら、スピードを上げらん。
「ど、どうやって動いてるのよ…」
「Bあぶない!!」
「え?」
 Cの注意もむなしく、Bは前の岩につまづき給ふ。
「キャア!!」
 カタカタ…
 目の前に目玉のかたほうもなく、手足もないむざんな人形がありつる。
 そしておもむろにBのかたに凶暴な歯をつきつけられんとほっし。
「B!!」
 Cの叫びと同時にBのかたから血が出でたもう。
 B、あまりの事に気絶したもう。
「キャーーーーー!!!!」
 C、Bをおき、逃げる。
「どうしよう………!」
 すると、あの者あらわれCアドバイスしたもう。
「そもさんと云うべし。しからばのろい、とけつる!!」
「おじいさん…」
 やっぱりこの老はぼけておらぬとCは確信したり給ふ。
「ありがとうおじいさん!!!」
 C、言いおえるや否や、走られ給ふ。
「そもさん…じゃよ」
 老、一人言のようにつぶやきたもふ。
 Bの所に戻りしCは、人形とBをさがしたもう
「どこよ…」「はっ」
 C、Bのむざんな姿におどろきたもう。血が出でて、とてもみていられないほど不細工な顔で気ゼツしていた。
「B、生きてるわ…」
 多少Cほっとしたもう。
 しかし不細工……。はこんで兄弟に見られる事を恐れたもうて、Bがおきるまでまちつる。
 そして、やがてB、おきたもうて、云う。
「あ……私…生きてるの?…」
「B……いきてるわよ!!」「Cーーーー!!!!」
 B、C、抱きつきたもう。
「あの人形は!?」
「もう…いないみたい…」
 カタカタカタ……ーーー。
 空耳のごとくあの音がきこえしに、B、C、無言となり給ふ。
 あたりを見まわすと、
「ミ・ツ・ケ・タ…」
 カタカタという音の間で空気が凍るような声がもれたもう人形があらわれる。
「!!ギャアアアア!!!」
 2人、さけびつるに町に出たもう。
 C、「そもさん」と云ふのを、あまりにもおそろしくて云ふのを忘れ給ふ。
 それに気づかりしに、Cは後ろをふりむくと、
「ムダダヨ…」
 と云ふ人形が在りし、Cすぐさま
「そもさん!!」
 と云いはなつ!!
「ギェアアア……」
 人形、氷の朝日に出会ふがごとく消じ尽きた。
「…………はぁ………よかった…」
 B、すわりこみ、ためいきをつきたもう。
「こわかった」そして2人、町に出でたりて。
「だれかAの手がかり知らないかな〜」
 気分の切りかえがはやいB、Cはお気楽にAをさがす旅にでた。


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