青頭巾

牙夜と水谷の合作。
この一枚の中で「青頭巾」のストーリーを、実に忠実に簡潔に纏めてある傑作経典。





 (牙夜画)
 昔あるところに、快庵禅師という、大徳の聖おはしましけり。
 禅師は若い頃から仏の悟りの境地を明らかにされた凄い方なのです。
 こんなアホ面してるけど、実は凄いお人なんです。

 太陽はもうすぐ日が沈む、黄昏時を表しています。


 (水谷画)
 ある村に来たとき、この僧を見た人はみんな驚いて逃げました。女子どもはこいまろびてくまぐまに隠れたのでした。


 (牙夜画)
 この人はとある家の主です。特徴は目が33なところです。
 隣は主の目のアップです。


 (水谷画)
 主は禅師にこころよく食べ物を饗しけり。


 (牙夜画)
 主、事情を語ります。カッコヨク美化して真剣に話します。


 (牙夜画)
コイツ全然聞いてねえだろ禅師、真剣に聞いています。


 (水谷画)
主は言います。
とある阿闍梨と、容姿の雅やかなる童子がいました…。


 (牙夜画)
しかしその童子は病に伏して死んでしまったのですー!
阿闍梨は泣きました。泣いて泣いて、(略)その肉を食べてしまいました。そして鬼となってしまったと言うのです。


 (水谷画)
その話を聞いた禅師は、世の不思議、悪人正機説などを語ります。
そして、今日のおもてなしのお返しにその阿闍梨を救いましょう、と言いました。


 (牙夜画)
主、頭を畳に摺りて「浄土に生まれたが如く嬉しい」と感謝しました。
なんと、2mも擦りつけているのです。
しかし何を思ったのか、頭の大きさが2mということになってます。
これはどういうことでしょう、不思議です。


 (水谷画)
さて、阿闍梨のいる山のお寺に行きました。
錫をチリーンと鳴らしています。「今夜ばかりの宿を貸し給へ」


 (牙夜画)
うおっと、幽霊みたいな人が現われました。
痩せ枯れた人は寺の主の僧でした。
「このような荒れた寺には、もてなすものがないですよ……」


 (左:水谷 右:牙夜画)
さて影玲瓏として至らぬ隈もない子の刻。
突如主の僧が慌ただしく動きました。「くそ坊主どこに隠れた! ここもとにこそありつれ!」
そして庭を躍り狂う有様。



狂い過ぎ!!


 (水谷画)
朝になって醒めた主の僧。
彼は鬼畜になったから禅師が見えなかったのです。
「救ってあげましょう。我が教えを聞くか否か」


 (牙夜画)
主の僧に紺染の頭巾を被せ、証道の歌の二句を授け給ふ。
 ……江月照松風吹…永夜清宵何所為…

 静かな入江を月は照らし、松風だけが聞こえる。
 永い夜の、この清らかな宵の景色は、なんの為にあるのか。
 さあみんなも考えて悟りを開こう!


 そして一年が経った。

 (水谷画)
あの一宿の主の家に立ち寄り、あの僧の様子を尋ねました。主は「わーい」と喜んでます。
もう里には下りてこないけど、こちらも山に行かないので様子は知りませんと言う主。


 (牙夜画)
様子を見に山の寺へと行く快庵禅師。


 (牙夜画)
すっ、するとなんと!!
これは目のアップです。驚いている白目です。


 (牙夜画)
声が…声が聞こえるのです。
これは吹き出しの中で、さっきの二句を歌っているということを表した絵です。
そう、あの僧はずっとずっと考え続けていたのです。


 (水谷画)
「作麼生何所為ぞ!!」一喝して僧の頭を撃ち給ふ!!
するとたちまち、氷が朝日に出会うかのように消え失せました。確かに成仏したのです!


 (牙夜画)
残ったのは彼の骨と、あの青頭巾であった……
完。


牙夜さんは凄いお人だってことです。


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